557「春のひととき F」(マヌケ+の男)

06.06.月/2022

★思いついて(しまって)

去年9月某日のバイト作業中、ふと「保険」のことが頭に浮かんだ。
続いて「富士火災海上保険」の名が。
「そうだ、富士の店舗総合損害保険に入ってたんだ・・・」

1992年、脱サラしての酒場墨丸創業時から発病による2015年閉店まで加入のその保険。
掛け金が月々自動的に口座から引落しされるゆえに、いつしか存在忘れていたに等しいそれの認識は「火災」だったその保険。
今となっては「なぜ?」との忌まわしき存在と化したその保険。
ふと思い出さねばよかったその保険・・・。

その保険に関するミス責めるべきは我が身に巣食う「マヌケ」という半身か。
否。
自営業で生じる苦行苦難にたった一人で相対するなか、フォローしてくれる相方さえいてくれれば・・・本来その役割のはずの我妻リ・フジンと結婚する前、街頭易者占いで「この女性はあなたの人生の足を引っ張る存在です。生き別れ死に別れ免れません」とまでいわれたその言葉どうり※、いつしか我が傷口に塩塗り込める存在とまで化した、リ・フジン・・・いやいや、人のせいにはすまい、してはいけない。我輩がマヌケなだけなのだ、結婚ふくめ・・・。
※そのときは「まさか」。が、墨丸来客の幾人もの各種占い師も同様の弁。「できるだけ会わぬほうがよい」とまでいわれてのこの十数年、最小限の会話のみの生活という港に我輩待避中。女の理不尽さという衣を全身にまとってはいるが、善人であることだけが、救いか。

★スッキリさせよう!

というのも、この保険活用可だったろういくつかのハプニングが過去にあったのだ・・・。
そのバイト中に思い出したというのは、かつて二度も空き巣被害に遭ったこと。
もちろん、今この時点で「時効」の思いはあった。
死亡保険金請求の時効さえ確か10年というんだから。
が、一縷の望みのもとに物は試し、スッキリさせようと、保険会社に電話。
すると、その富士火災海上保険は合併により、AIG損害保険に名称が変わっていた。

けれども言葉付き丁寧なCという男性が親切に電話対応。
で、「かつて店舗総合損害保険加入時、空き巣被害に遭ったが保証対象になるや否や」と質問。
被害日時、場所、警察への届け出有無等聞かれて答え、「当時の資料はパソコン入力がなされていませんので調査に少々時間を要しますがお調べしてご連絡致します」との返答。
そうかと我輩、電話を切った。
しかし、スッキリにはほど遠い事態が待ち受けていた・・・。

★その事態とは・・

後日、電話がかかってきた。
「只今調査中です。もうしばらくお待ち下さい」と。

そして時は流れ、日にちは忘れたけれど年内にはスッキリしたいと、改めて当時の詳細な被害日時等を調べ、Cに電話報告。
当時の居住地住所など改めて聞かれ、返答してこの日は終了。

が、年末近くになっても連絡、なし。
待った。待ち続けた。
そして、とうとう年を越え・・・。

さらに待った。待ち続けた。
もうどうでもよい気分での今年3月15日火曜日、三度目の電話。
なぜか電話口には毎回Cが出る。
C「今週中にご連絡致します」

また待った。待ち続けた。
週が明けても連絡なし。
もう、不信感のみ。
Cの声など聞きたくもなくなった。
けれども今後どういった対応するのか、興味津々。
だからほっておいた。
ああ、AIG損害保険に今現在ナニかに加入していればよかった。この件で「すべて解約」と言ってやれば面白いのになどと思いつつ・・・。

そしての今年5月23日月曜日、4度目の電話を入れた。
相変わらずCが出た。
窓口は此奴だけなんかよ。
ゆえに無言で電話を切った。
我輩の携帯番号とさとられぬよう、このときは固定電話使って・・・。

★そして!

その電話切ったあと、AIG損害保険の「お客様相談室」の番号調べて電話。
「昨年9月に連絡を入れましたが・・・」と、電話口の男性に今日までの経緯述べると、先方驚いたように「すぐ上司に相談してご返答致しますッ、Cでなく別の者から電話を差し上げますのでッ」と、平謝り。
我輩「もう急ぎませんのでいつでもいいです・・・」

翌日、女性から電話が入った。
女性なら穏便に済ませるかと思ったのか?
でも、即対応もできるんだ、AIG損害保険。
その女性によると、申し訳無さそうに「盗難被害時効は3年」と。
「ならば去年電話した時点で時効との返答できるはずでしょ?」
「ごもっともでございます」
「Cさんはなんの担当?」
「損害保険請求の受付担当で・・・」
「なら余計に熟知してることのはずでしょ?Cさんはなんとおっしゃってるの?」
「失念していたと・・・」
「三流、四流の会社じゃあるまいし、そんなことありえんでしょ?」(嫌味だけど、AIに担当させろよといってやればよかった)。
「ごもっともでございますッ。本当に申し訳ございませんッ」
相手の策略?による女性相手の我輩、終止紳士的な受け答えだった・・・。

女性いわく、時効でも保険加入者が納得できぬ場合、さらなる協議も可能だという。
が、通常の保険請求時でも被害金額の詳細な資料(被害時の売上伝票の他、被害金額の裏付け資料等)提出せねばならぬとのこと。
いまとなってはそんな資料あるはずもなく、警察への被害届け内容だけでは協議対象にもならぬわけで、昨年9月に電話した時点でもうすべてが無理だったのだ。
こうして自尊心も金も溝に捨ててしまう結果となり、これを徒労に終わったというのだけれど・・・。

こういう被害に遭うたびに思うのは、「宝くじ当たればすべて挽回、すべてチャラ!」という、これまたマヌケが思いつくようなことのみで情けないけれど、電話の声からして40才前後かと思える「保険請求の受付担当」のC。AIGでの未来はもう暗いだろう。
まさに我輩うわまわる、マヌケ+の男がいたというのがせめてもの慰め・・・。
 
「春のひととき」シリーズ 完

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