585「キリギリス男、息づく夏夜 B」(「0004694276 最終話」)

7.12.水/2023

で、緊急手術!
・・・といっても、カテーテル処置ですけど。

※カテーテル:体腔または膀胱・尿道・気管・食堂・胃などに挿入して液体や内容の排出ないし薬液等の注入をはかるための管状の医療器具。

簡易ベット上の我輩、横たわったまま狭っくるしい別室に移動。
その部屋、病院とは思えぬ、天井の一部が黒いシミにおおわれた物置小屋のような所。
そこで男の看護師が我輩に告げた。
「治療中に膀胱から直接尿を排出させるための処置を行います」
な、なんと、我が尿道になが〜い管を直接差し込んで・・・なんてことをされるのだった!

※以前、この病院で別の手術を受けた知人の同様の体験談はショックだった。で、まさかおのれの身に・・・であった。

そしてそこは「黒ジミ拷問部屋」と化してゆく・・・「痛いですよ、痛いですよ、痛いですよ。はい、大〜きく息を吸って、吐いて」と、男の指示通り大きく息を吸い込んだら、あまりの激痛にそのあとはもう「スッハ!スッハ!」
その足元での作業状況、最初っから目視せず、直視できず。
目の当たりにすればたぶん我輩、気絶失神もしくは発狂・・・。

※先年体験の白内障手術同様、いちばん最初の被験者のコト知りたし。いままでの入院時には尿瓶使用で経験のないこんな処置、その必要性いまだわからず。今度担当医に聞いてみよ。

その拷問部屋からこれまた治療室とは思えぬ広い倉庫のような場所に移動。
ベッド足元に医師二名。
で、局部麻酔しつつの医師「痛いですよ」(またしても。まさかこの病院、患者いたぶってる?)と、我が右腕手首動脈に数センチの長さのパイプ差し込み(これは麻酔のせいか、そんなに痛み感ぜず。いや、もう痛みに鈍感になっていたかも)、そこからカテーテルを心臓まで差し込んでいき・・・胸のなかを管が動き回る不快感は気のせいかと思っていたら後日、同様の処置受けた方の体験として、実際これは感じとれるらしい。

※後日、徳洲会病院においてカテーテルによる死亡事例続発との報道。こんな事件を知ってこの場に臨んでいたならばまさに恐怖・・・。

午前7時処置開始で終了8時半。
一時間半もの身動きできぬ意識朦朧下での不快なる無間地獄・・・。

集中治療室に移動。
血だらけの右腕手首には長さ数センチのパイプが刺さったまま。左腕には点滴などの二本の針が差し込まれ、胸には心電図用の数本の線。鼻には呼吸器の管。そして尿道には管が突き刺さったまんま。

2015年夏の脳出血の際と同様、集中治療室での記憶はほとんどない。
ただ覚えているのは、周囲の看護師らが「みんな若いな」ということと、6人で満室というその集中治療室、最後に入室の我輩の症状が最も軽度とかで、夕刻には隣の病室へと押し出されると知ったことぐらいか。

その大部屋の病室、これまた地獄。
各種コード類に繋がれ身動きできぬゆえ、その部屋に何人収容されていたのか、かつ患者の出入りが頻繁でわからずじまい。ただ、通路隔てた真向かいの老人患者が24時間「しゃべる」のだった。
初日我慢し、二日目にはその意味不明の独り言に返事し気を紛らわせていたけれど(返答なし)、睡眠不足重なってついにはブチぎれ「やっかましいわいッ」

退院する男性が看護婦に「新しく入った患者さん、キレてましたよ」と告げてるのが耳に入った後刻、看護婦さん「すみません、向かいの患者さん別室に移動しますから」「個室に?」「いえ、同じ認知症患者さんの部屋に」。認知症、だった。が、そんな患者を同室させて病人の我輩を眠らせないなんて、やっぱりここも拷問部屋?

それと、集中治療室同様、身の回りで見かける看護師らがこれまた若かった。
ここは看護学校かよと思ったほど。
ゆえにか、認知症問題のほかにも不手際?多々。
「シャワー使われます?」「はい」「じゃ、後ほどシャワールームの場所ご案内しますね」(ソレっきり)。
「下剤いただけますか?」(入院中は便秘になりやすいという)「はい」(ソレっきり)。
「この病院、泌尿科もあるようですから陰のう水腫の処置をついでにお願いできますか」「はい、主治医に伝えておきます」(退院時に主治医に確認すると、伝わっていなかった・・・「水腫」の話は469参照)。
ちなみにこれら看護婦さん三人、常に端末機器を携帯操作。ただ、今回のようなアナログ会話処理能力はすでに、退化?・・・あなおそろしや。こんな時代に生まれなくって良かった。

医師の当初の見立てに反し、3月13日(月)〜17日(金)の短期で退院す(2015年の脳出血時の入院も一ヶ月短縮。で、我輩ってけっこう立ち直りはやいんだと今回理解。死んでも息吹き返すかも)。

備考

@親族の女性三人それぞれに言われた。
「スミがご主人の身代わりになって死んでんで」(スミは579で記した飼い犬の墨丸のこと。そうであるならば、まさに忠犬スミ公!)。

Aその新・墨丸入手のため、579で記した「禁煙」。
奇しくも入院前日の3月12日(日)からいまだ継続中。過去に1年間禁煙の経験あるゆえ安心にはほど遠い・・・。

B入院日の3月13日月曜は、昨年亡くなった母の納骨式の日だった。
もち不参加。

C表題の「0004694276」は、入院中に腕に付けられていた我輩のタグのID番号。

D「今夜の名言!」(入院中に読みまくった病院所蔵本より。作品名等忘失)

「人の死がこんなにあっけないものだとは思わなかった。そして、人が死んだあとの日常がこんなにもすんなり流れていくのだとも、初めて知った」

「0004694276」完

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