589「今夜の本!」(2/2024 復活版!)

3.8.金./2024

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!?」 4「読み応えあり!」 3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション系 ※=再読 ?=ようワカラン

注:「傑作!?」「駄作?」の「?」にご留意。独断と偏見による評価であります/「普通」のみ+−評価あり。

1.「純愛小説」短編集/篠田節子/角川文庫/3.0+
2.「颶風の王」河崎秋子/角川書店/4.0 三浦綾子文学賞
3.「恐怖と哀愁の内田百フ」短編集/内田百フ/二葉文庫/1.0
4.「ロズウェルなんか知らない」篠田節子/講談社/4.0
5.「東京難民(上)」福澤徹三/角川文庫/5.0
6.「東京難民(下)」福澤徹三/角川文庫/5.0
7.「眠れる美女たち(上)」スティーブン・キング オーウェン・キング/文藝春秋/×

収録4篇のうち我輩好みが2篇ありで評価「+」となった「純愛小説」。
その2篇、気が弱く世間知らずの老女が悪い男に騙され全財産を失う「鞍馬」、若く美しい妻が夫が年上の老女と浮気していると精神科医に相談しての「蜂蜜色の女神」、それぞれの結末が「!」で評価up。

河崎秋子デビュー作「颶風の王」(颶風は強風の意)は、不遇な青年が狂女となった母の手記でその壮絶な過去を知る。自分を孕んだ母と愛馬が雪崩で雪洞に閉じ込められ、馬は母の髪や頭皮を、母は馬の血肉を喰い生き延びたということを。そして物語は明治から現代へ。北海道根室沖の無人島「花島」にその愛馬の子孫が生存していることが判明。崖崩れで断崖絶壁となり人の近づけぬ孤島と化したその崖上に置き去りにされた子孫の一頭がだ・・・読後、偶然テレビ番組で根室沖合にユルリ島という馬が生息する孤島があるのを知った。ここが花島のモデルではないか。前回紹介の「絞め殺しの樹」読了翌日、著者が直木賞受賞と知ったと同様、偶然が重なった。

作家の角田光代さんがインタビューで印象に残った作品問われ「サラサーテの盤」を挙げていた。
死んだ友の妻が、夫が貸していた本やレコードを返してくれと夜ごと訪ねてくる。そんな女のことが淡々と綴られている。ただそれだけの話。この短編はかつて読んだことがあった。が、今回再読しても展開まるで覚えていず。だからか文豪百フに興味抱けずのままだったんだろう。角田さんいわくの「特異な雰囲気」も収録の全15篇がとなるともう食傷気味。で、凡人評価「1」

2月のオススメは「東京難民」!
三流大学在籍の怠惰な青年が、実家から振り込まれているはずの学費の滞納で突然除籍に。実家の電話はなぜかつながらず、遊び惚けて貯金もない男は実家に帰る旅費もなく家賃も払えず・・・こうして男はどんどん底辺の生活へと追い込まれていく、その過程が身につまされる「異色青春小説の傑作」(編集部)。福澤さんってホラー小説以外にこんなリアル悲惨小説も書かれるんだと改めて知った。有能な医師や刑事や探偵が主人公の作品や殺人などの非日常的な作品よりこうした身近なテーマの作品が好み。映画化作品ありとのこと。で、次の小説も・・・

墜落したUFO回収で話題となった米国のロズウェル事件を題名に取り入れた「ロズウェルなんか知らない」。
2030年には人口がゼロになると予測される過疎の村が舞台。村にある小さな遊園地の廃墟、ストーンサークル的な石や巨石、廃屋等々を材料に、村の青年らが村を「四次元ゾーン」に仕立て上げ、村再興目指しての悪戦苦闘の物語。前回紹介の同作者「仮想儀礼」はドラマ化されたけれど本書も!と期待。

各冊500ページかつ二段組上下巻「眠れる美女たち」はキングの息子との共作。
かつては分厚ければ分厚いほど期待のキング作品・・・だったのに本書は図書館本ゆえの返却期限という制約あったとしても冒頭からのめりこめず、数ページで挫折。昨年末に読んだ、これも近著のキング短編集2冊「わるい夢たちのバザール1 マイル81」と「2 夏の雷鳴」の半数の作品が「平凡な日常を題材にした普通小説」ってんで面白くもなんともないウンザリ本だったけれど、本書のその冒頭も同様。今回の大長編、再挑戦の気はあるんだけど・・・。

「今夜の本!」(2/2024)完 5

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