602「今夜の本!」(附録;映画と名・迷言)(1〜3/2025)

4.6.日./2025

我が趣味の読書と映画鑑賞、どちらか選択をとなれば、迷わず「本だ」と思うように。それほど昨今、映画作品は佳作以下ばかり。で、観終わったあと「時間のムダ」と思うことしきり(思いがけぬ結末あるかもと一縷の望み抱いてしまってエンドマーク迎えるのがくやしい)。で、本年より「映画」は付録的位置づけにランクダウン。かつ、面白みのない作品は容赦なく「断念作」として録画消去!

※パソコン不調で記せなかった2024年9月〜12月の読書済み35作品(デスクに積み上げたままの)については、いまとなっては読み終えたのか未読なのか不明な作品も。で、順次数ページずつ再読チェックしていこうかと。だって面白そうなのばかりだもの。

ガジュ丸評価基準
5「必読の傑作!」 4「一読の価値ありの秀作」 3.5「損なしかもの佳作」3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション系 ※=再読(再鑑) ?=ようワカラン ×=断念作 ガジュ丸賞=月間トップ作
注:評価4以上がおススメ作品/映画評価も以上に準じます

[今夜の本!] 

1月
1.「蹴りたい背中」綿矢りさ/河出文庫/3.0 芥川賞
2.「鬼」短編10作/今邑 彩/集英社文庫/3.5
3.「もう一杯、飲む?」短編9作/新潮文庫/3.5
4.「カラスは飼えるか」NF/松原 始/文庫/3.5
5.「しゃもぬまの島」上畠菜緒/集英社文庫/3.5 小説すばる新人賞
6.「その部屋にいる」S.L.グレイ/ハヤカワ文庫/3.5
7.「最後の乗客」マネル・ロウレイロ/マグノリアブックス/3.5
8.「死刑囚メグミ」石井光太/光文社/3.5
9.「崩れる」短編8作/貫井徳郎/角川文庫/3.5

既報の通り、正月以降の体調不良で終日寝転がっていた日々多くての冊数消化の反面、夢うつつゆえかの読書で全作内容うろ覚え。ゆえに今回、主に評価点数のみ記載(これも不確かですけど・・・)。
                                                                                                                                                                                                                                
と、いいつつも、味気ないので作品紹介を少しばかり・・・’お酒のある風景’がテーマの短編集「もう一杯、飲む?」や、カラスの肉って美味しいの?’という動物行動学の本「カラスは飼えるか」、ともに興味深いテーマなのに内容覚えていず。
 
我輩の小学生時、死ぬまでにはその謎解明をと願ったマリー・セレスト号事件(洋上で発見された大型ヨットの船内にまだ温かい食事が残されているにもかかわらず、乗客全員が消えていた怪事件)の大型客船版「最後の乗客」、南アフリカに住む家族がパリ旅行を計画。節約のため泊まることにしたのは現地住人の留守宅。が、その部屋はネットで紹介されていた雰囲気とは異なり不潔で陰気・・・というホラー「その部屋に、いる」。この二作品の結末も記憶が定かではない。「その部屋に」はスピルバーグが映画化権取得というから映画で再確認できるかだけど、以上の全作読み直したい心もち。

著者デビュー作「慟哭」、日本推理作家協会賞「乱反射」の二作でハマった久々の貫井徳郎さんの’結婚にまつわる八つの風景’描いた「崩れる」。冒頭の表題作がおススメ。無責任な夫と身勝手な息子に対し主婦がとった行動とは?読み終わってスッキリしたのは我輩だけではないだろう。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

そんななかでのガジュ丸賞は、石井光太「死刑囚メグミ」か。
「荷物を運んだだけなのに、彼女は死刑判決を受けた」という、ノンフィクション作家としての取材力に裏打ちされたドラッグ運び屋テーマのこれはフィクションの力作。が、これも結末、記憶から消滅・・・。

2月
1.「誰かが見ている」宮西真冬/講談社文庫/3.5 メフィスト賞
2.「ザ・レイプ・オブ・南京」NF/アイリス・チャン/同時代社/?
3.「秘匿患者」ジョン・バーレー/ハーパーBOOKS/3.5
4.「自殺死体の叫び」NF/上野正彦/角川文庫/3.5
5.「八つの小鍋」短編8作/村田喜代子/文春文庫/3.5 芥川賞 他
6.「あのひとは蜘蛛を潰せない」彩瀬まる/新潮文庫/3.5
7.「家霊」短編4作/岡本かの子/ハルキ文庫/3.5
8.「身代わりの女」シャロン・ボルトン/新潮文庫/3.5
9.「座席ナンバー7Aの恐怖」セバスチャン・フィツェック/文春文庫/3.5

NFの注目作は、数十万人虐殺事件の肯定否定派に別れ物議の的となったアイリス・チャン「ザ・レイプ・オブ・南京」(副題;第二次世界大戦の忘れられたホロコースト)。
本書読破には、昨年夏から今年2月までを要した。というのも、1968年生まれの若き作者が1997年に出版という本書記述の真偽の点で、中道右派の我輩としては素直に読み進められずして(日本本土空襲死者よりもはるかに多い虐殺被害者数や慰安婦は性奴隷説等がベースゆえ)。欧米の一部マスコミ報道で大虐殺は事実無根とされたという記述は「された」というそれだけの記述なのに、反日「朝日新聞」記事抜粋多々。で、評価?

法医学者の上野正彦さん著作では死体検視の世界を垣間見ることができる。
著者の6冊目となる「自殺死体の叫び」で印象に残ったのは、昭和の死体と平成(本書は2000年作)の死体の相違。かつての殺人事件加害者と被害者の関係は単純明快で、金銭や異性関係に端を発していたから検視や解剖をしているうちに犯人像が見えてきた。が、平成に入ってからの犯罪死体は全く違ってきているという。ムカつく、キレる、殺してみたかった、人を殺すのはなぜいけないなど、人の命を虫けら同然に考えている云々ゆえの事件が多く、迷宮入りが多くなっているという。その理由に人心の荒廃を挙げている。我輩の子供のころは、人の悪口を言ってはいけないなどとの道徳教育が根底になされていたように思えるのだが、昨今のネット上での誹謗中傷、多発する児童の自殺、子供対象の性犯罪等知るにつれ、これら人間の心の問題なんて修正修復可能なんだろうか?と。                                                                                                                                                                                                                                                                                     

パブリック・スクール卒業を間近に控えた優等生男女6人。肝試しで高速道路を逆走。母子3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。一人罪をかぶり自首した少女の運命は?CWAスティール・ダガー最終候補作「身代わりの女」。事故前後の描写が秀逸(すぎた?)。                                                                                                                     
  
で、ガジュ丸賞は、’子供’にジレンマを抱える4人の女性が織りなす、極限のサスペンス!がうたい文句の「誰かが見ている」(「極限の」は、大げさすぎました)。     

3月
1.「墜ちていく僕たち」森博嗣/集英社文庫/ついてゆけぬ文体で、×
2.「遭難信号」キャサリン・ライアン・ハワード/創元推理文庫/3.5
3.「凍える島」近藤史恵/創元推理文庫/3.5
4.「セカンド・ワイフ」吉村達也/集英社文庫/3.5
5.「妖櫻忌」篠田節子/角川文庫/3.5
6.「四つの雨」ロバート・ウォード/ハヤカワ文庫/3.5

普通の人間があるきっかけで奈落の底へ、という展開の作品を、好みというよりつい手にしてしまう(というのも、我輩も普通人ゆえ感情移入しやすくて)。
古き作では、元闇金経営者の新藤冬樹「無間地獄」。その闇の貸金世界を描き切っての傑作だったけど、読後、こんな「嫌な」気分、もう味わいたくないと著者の他作品読めなくなってしまった(普通人は単純?)。
反して、著者の翻訳作品群ほぼ読み切るに至ったのは、傑作「悪女イブ」の作者ハドリー・チェイス。売れない作家が盗作で一躍ベストセラー作家に。おのれの才とのギャップに苦しむ彼の前にイブという女が現れ…という、両作品とも「奈落」描いたおススメ作品。

で、ガジュ丸賞は、上記同様の奈落作「四つの雨」。
貧民街で住人相手にクリニック営む心理療法士が主人公。50歳代の彼はかつてギャンブルにはまり妻にも逃げられ、いまも困窮生活。主な収入源の唯一裕福な患者の美術商の診察続けるなか、若きウエイトレスと出会ったのが運の尽き。その患者の美術品盗み出し換金した資金で女との豪華な生活の夢を抱いてしまい…。訳者あとがきに書評家や作家からの称賛の声が多々紹介されてはいるけれど、「?」。今回、スラスラ読めた吉村達也「セカンド・ワイフ」同様、その「スラスラ」が展開の「軽さ」ゆえかと思えて。本来なら評価4だったかもなのに残念。

※三か月分一気に記して疲れたんで「附録;映画と名・迷言コーナー」、あらためてご報告。

「今夜の本!」(附録;映画と名・迷言)(1〜3/2025)つづく

<戻る>