6.25.水./2025
ガジュ丸評価基準
5「必読の傑作!」 4「一読の価値ありの秀作」 3.5「損なしかも?の佳作」3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション類 ※=再読 ?=ようワカラン ×=断念作 ガジュ丸賞=月間トップ作
注:映画評価も以上に準じます
[今夜の本!]
1.「笑う招き猫」山本幸久/集英社文庫/3.5 小説すばる新人賞
2.「オクトーバー・リスト」ジェフリー・ディーヴァー/文春文庫/4.0
3.「わが母なるロージー」ピエール・ルメートル/文春文庫/3.0
4.「夕暮れを過ぎて」短編7作/スティーブ・キング/文春文庫/3.0
5.「アースクエイク バード」スザンナ・ジョーンズ/ハヤカワ文庫/3.5 英国推理作家協会賞
6.「喪失記」姫野カオルコ/角川文庫/3.0
7.「無意識の証人」ジャンリーコ・カロフィーリオ/文春文庫/3.0 キアヴァリ市文学賞 他
芸人とは思えぬ愛想のない顔つきで好きでない又吉直樹(くしくも同名の尾木ママこと尾木直樹にはより生理的嫌悪感)の芥川賞受賞作「火花」なんてより格段に読み応えありの「笑う招き猫」は、「火花」同様漫才コンビが主人公。ただし、超貧乏で彼氏なしの売れない「アカコとヒトミ」という、これは若き女コンビの物語。小説すばる新人賞がうなずける青春小説の快作!
「アースクエイク バード」は、東京に住む英国人女性ルーシーが日本人男性と恋に落ちての殺人絡むドラマ。
作者は長期滞日経験ありとのことで、物語の展開より主人公ルーシーのその日本での緻密な生活描写に興味を奪われてしまった感。2019年にリドリー・スコット製作総指揮によりネットフィリックスで映画化されたゆえ、その映画作品でじっくり物語の展開再確認予定。
今月イチ押しのガジュ丸賞は先月に続いてのディーヴァー作品の「オクトーバー・リスト」。
一言でいうならばこれは「驚嘆本!」。なのに評価5に至らなかったのは物語が「最終章」から始まるゆえ。で、つづく章ごとに時間が逆行してゆくその仕組みに、読み始めて物語展開わからず戸惑うばかりでの評価落ち。が、その展開に慣れたころ待ち受けていたのは「前人未到の超絶技巧サスペンス!」との評価の、真相が明かされてゆく驚愕の後半の章。先月紹介の著者の「ハンティング・タイム」同様、どんでん返しの連続で、両作品ともすべてを疑いながら再読したしの感、芽生えること必至!
[今夜の映画!]
このたび、WOWOWの視聴契約解除。
WOWOW発足時よりの視聴者だったのにだ。
物心ついて以来の映画ファンなのにだ。
というのもこの一年ほどJ;COMのネット回線利用。
で、それまでのWOWOW個人契約もJ;COMパックに変更。
けれども変更当初から録画再生画面が数秒単位で途切れるわ、録画が中途半端に終わるわ、再生エラーとかで途中で再生できぬわのトラブル続き。で、接続機器交換に至るも、しばらくすると同様の症状。状況連絡すると毎度のごとく「リセットボタンを長押ししてください。配線が緩んでないかのチェックを」の繰り返し(中古車販売業「軽の森」同様、日本企業と思えぬ対応のJ;COM。第三者によると、J;COMチューナーのケーブルとテレビケーブルの違いが原因らしいが)。
そんなさなか、以前加入のeo光の営業マン来訪。
その時の会話が以下ー
「J;COM加入でネットフィリックス等が視聴可ってんでeo光から切り替えたんやけど、eo光加入時にネットフィリックス等の利用も勧めてくれてたらよかったのに」
(我輩はネットではWOWOW視聴オンリーでネットフィリックス等は我が妻リ・夫人が自室で韓国ドラマ見まくるのに独占。我輩はその利便性も利用法も知らぬままだった)。
「eo光ご加入当時はまだネットフィリックス等のパックはどこも提供してなかったんです。こうしたサービスは5年ほど前からでしょうか。で、お客様、現在J;COMパックにWOWOWも入ってますが、これはやめられたら?」
「え、なら映画が観れませんやん?」
「いえいえ、私も映画好きなんですがネットフィリックスやユーネクストで映画を観てますよ。それで充分すぎるほどですし、料金も安いです。ただしeo光に切り替えると以前の録画分は回線切り替え時にすべて消去されてしまいますが」
「え、いまあのウオーキング・デッド最終章の録画分を観はじめたばかりやのに!?」
「大丈夫です!ネットフィリックスではシーズン1からすべて観れます。最終回、どうなるかお教えしましょか?」
「イヤです!」
(最近のビデオレンタルショップの売り場縮小の原因がコレで分かった)。
そう、長年にわたり観続けていた「ウオーキング・デッド」(ゾンビ対人類生存者の傑作サバイバル劇)、何年も前に観たシーズン1の展開などもううろ覚え。WOWOWではシーズン6終了から最終章のシーズン7放映まで1年近くもの空白期間があったのだ。なのに、それらが録画不要でいつでも鑑賞可の時代になっていた…あの大作ドラマ「ロスト」も観れるンだ!生きててよかった。
で、只今その切り替え工事中(eo光の遅い作業対応も問題だけど)。
そんなわけで、千時間余りの我がWOWOW録画映画全消去され(てもネットフィリックスで観れるんだから未練なし)、昨今はレコーダー保存の録画済みテレビドラマを鑑賞中。
で、今月はそのドラマ群(6月最終回となった分)の評価版。以下ー
「魔物」(脚本;関えり香)
敏腕弁護士(麻生久美子)が関わった裁判で知り合ったDV男(塩野瑛生)との愛憎ドラマ。ひと昔前なら新鮮だったかものDV男と別れられぬ女という設定がいまや古くさいと思わせる稚拙な展開。で、我輩にとって数少ない魅力的女優の一人であった麻生久美子の魅力も大いに損なわれ、評価1.0。
「キャスター」(槌谷健 及川真実)
ベテランニュースキャスター(阿部寛)がニュース番組でとりあげる数々の事件の真相を暴いていく。それがご都合主義的で乏しいリアル感。評価2.0。
「恋は闇」(渡邊真子)
連続殺人犯かもしれぬフリーライター(志尊淳)と事件を追う記者(岸井ゆきの)の恋愛ドラマ。薄化粧役者の志尊(文明が進化すると男は女性化すると聞いたことがある)、カエル顔の岸井という二人のそのキャラが気になって仕方のなかったこれもリアル感欠落ドラマ。評価2.0。
(むかし、若手女優が週刊誌のコラムに「愛川欽也ってカエルを潰したような顔」と書いていて、大御所に対してのこの発言、大丈夫かしらんと危惧した覚えが。ま、彼の妻うつみ宮土理ともに、生理的にイヤな方々だったけど)。
「なんで私が神説教」(オークラ)
引きこもっていた女教師(広瀬すず)が高校教職復帰。問題多々ありのクラスを担任させられ、したくもない「説教」の日々となる。しかしそれで次々と生徒の信頼を勝ち得ていくという学園コメディ。それぞれの説教が結構説得力ありで、上記「キャスター」などよりはリアル感ありか。評価3.5。
「夫よ、死んでくれないか」(的場友見 原作;丸山正樹)
三人の主婦(安達裕実 相武紗季 磯山さやか)がそれぞれの夫(竹財輝之助 高橋光臣 塚本高史。これが各人特異なキャラで見ごたえあり)に殺意を抱き…。平凡な主婦たちが殺人を犯しての桐野夏生の傑作犯罪小説「OUT」を彷彿とさせ見ごたえ充分。けれども終盤、三人の「過去」を知る男が現れ「どうする彼女たち!?」とハラハラさせられも…で、マイナス点。原作読みたしの、評価3.5。
「親友は悪女」(本山久美子 原作;和田依子)
2023年放映作ながら、つい再鑑賞。
美人ではないけれど仕事もこなし気立ての優しい主人公(清水くるみ)が高校時代のクラスメイトを無二の親友と信じ込んでいる。が、その親友(山谷花純)が自分の人生を狂わしていることに気づかず、恋人を取られ職場を追われ…ついに!主人公の鈍感さにイライラかつ「親友」の悪女ぶりにもイライラさせられる二人の好演で、評価3.5。
「あなたを奪ったその日から」(池田奈津子)
脚本の池田さんは角田光代さんの同テーマの傑作本「八日目の蝉」意識してのこの脚本なんだろうなと思わせる、誘拐した幼児を我が子として愛し育てる女の苦悩を北川景子が熱演(女を感じさせぬ女優だけど)。誘拐された幼児の父(大森南朋)、その部下(筒井道隆)、週刊誌記者(仁村紗和)、原日出子、鶴田真由というキャスティングもいいし、今月唯一の、物語展開にも違和感なしの、評価4.0のガジュ丸賞作品!
[今夜の名/迷/言!]
ユリシーズは妻のところに戻りたくなかった。だからトロイ戦争をした。帰りたくないから戦争を引きのばした。
(映画「軽蔑」)
秋の夜や 旅の男の 針仕事
(小林一茶)
どっかへ走つて ゆく汽車の
75セント ぶんの切符をください ね
どっかへ走つて ゆく汽車の
75セントぶんの
切符をください ってんだ
どこへいくか なんて
知っちゃあいねえ
ただもう こっちから はなれてくんだ
(ラングストン・ヒューズ「75セントのブルース」)
死んだ女より
もっとかわいそうなのは
忘れられた女です
(マリー・ローランサン「鎮静剤」)
「今夜の本!」(附録;映画と名/迷/言)(5/2025)完