607「今夜の本!」(附録;今夜の映画と名/迷/言)(9/2025)

10.15.水./2025

★ガジュ丸評価基準

5「必読の傑作!」 4「一読の価値ありの秀作」 3.5「損なしかも?の佳作」3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション類 ※=再読 ?=ようワカラン ×=断念作 ガジュ丸賞=月間トップ作 
注:映画評価も以上に準じます

[今夜の本!]

01.「パライゾの寺」7短編/坂東眞砂子/文春文庫/3.5
02.「亡者の家」福澤徹三/光文社文庫/3.0
03.「眼」水上勉/光文社文庫/2.0
04.「青い壺」有吉佐和子/文春文庫/3.5
05.「BUTTER」柚木麻子/新潮文庫/3.0
                   
直木賞受賞作「山妣」の板東眞砂子による「パライゾの寺」は、民俗学者が採取した形式で語られる四国高知の人々の「運命に弄ばれた土俗の叫び」7篇。我が亡き祖父母らの経験譚をどん欲に聞きだしておくべきだったとの読後感。

男子大学生の主人公がどん底の貧困生活に陥っていく様をリアルに描いた秀作「東京難民」の福澤徹三による、消費者金融会社の新人社員が主人公の「亡者の家」は、その闇の世界が垣間見れての三面記事的面白さあり。が、ラストのオチに納得できずは我輩だけではないだろう。

傑作「飢餓海峡」の水上勉による、昭和37年刊行の興味深い題名の「眼」は、'推理小説作家'と位置付けられることに抵抗があったといわれる著者のその推理小説。で、本作はアンチ推理小説派の我輩ゆえの低評価。本書の死体なき殺人事件解決のヒントは、作者の飼い犬がビー玉を食べてしまったことによるとか。うふふ。

以下は話題の二冊  

昭和52年刊行の復刊本かつ爆笑問題の太田光が絶賛の有吉佐和子「青い壺」。古本市場やブックオフでは見つからず、念のためと我が書庫探してみると昭和55年の文庫版発見(未読)。無名の陶芸家が生み出した青磁の壺が買われ、売られ、贈られ、盗まれして陶芸家が再び手にするまでの変転のさまが描かれ読ませる。が、この程度の変転物語など他にもあるだろ、絶賛するほどかよと、アンチ太田光ゆえケチつけたくなっての評価ダウン。

海外でベストセラーとニューズウィーク日本版等で取り上げられた、ブスでデブの婚活連続殺人犯木嶋佳苗がモデルの柚木麻子「BUTTER」は、思わずバターを買いに走ってしまったほどの力作だけれども、そのわりに盛り上がりに欠けるかとの読後感(料理場面が多いせいか)。

9月のガジュ丸賞は、不本意ながら「青い壺」

[今夜の映画と名/迷/言!]

バイト帰りの日曜夜は大阪住吉の我孫子商店街の一角で一人酒。
最近はかつての墨丸会員から「今夜も?」とのメールもありでの2〜3人酒も。
そんな居酒屋で知り合ったホステスさんとの会話。

我輩「何曜日に店に出てるん?」
ホステス「月水土。ゲスイドウ(下水道)の女って言われてんねん」

笑った。
ちなみに彼女、墨丸非会員ながら超常連だった「おかちゃん」の"彼女"(もしくは元カノ)だった。偶然。だから我孫子が好き。

そんな我孫子の別の居酒屋で知り合ったМ女史。
その夜、遅い来店のМ女史いわく、自宅パーティーがあったゆえとのこと。
我輩羨ましがるとその月一開催の会に招待された。
その日は我輩、運よく呑み日の日曜日。
で、飲み物持参というので差し入れのワインと我輩用の地酒持参で午後6時半地下鉄我孫子駅着。が、そこから予測もしなかった地獄・・。

駅構内壁貼付の近辺地図パネルでМ女史ご自宅の5丁目確認。いざ出発。
さて、たどり着いたその5丁目の表示番地は11番地。
目的地は1番地。
って、どこや?

駅の地図には丁目だけで番地表示がなかったのだ。不覚。
招待された夜、酔っていたゆえМ女史の連絡先電話番号も聞いていなかった。不覚。 
近辺さまよい、ようやく8番地7番地6番地と続くルート見つけたというのに、その先で突如5丁目途切れ、7丁目になってしまった。不覚。
我が地元では各戸に丁目番地プレート貼付してあるというのに、ここ住吉各戸にはそれがなく、数十メートルに一か所の割合で街角にその表示があるだけで現在地確認だけでも一苦労。で、気づけばもとの11番地に戻っていて・・。

通りかかった若いカップルに1番地尋ねる。
親切にもお二人、早速各々スマホ取り出し検索(我輩のはガラホーなのだ・・)。
男性「あちらのほうですね」と東の方を指さしてくれる。一安心。

当初の行程戻りつつ、訪問予定時刻の6時40分はとうに過ぎ去ってると気づく。あせる。
でも、3番地発見。
ならこの近辺だ。
が、次が4番地だった・・。
なら逆方向か。が、その方面にМ女史のマンションらしきビルがない。
ここに至るまで、何人に1番地を尋ねたことか。
みな親切ながら不明なままここまでさまよってきたのだった。

ズシリと酒瓶2本入れたバックの重みが肩に食い込む。
1915年の大病後遺症で少々足の悪い我輩、もう歩けぬほど疲れ果て・・あきらめようか。けど、いいかげんな男と思われるやろな・・と思い佇んでいると、脇を通りかかった青年が声をかけてきた。
「どうされました?先ほどからなにか迷っておられるようですが?」
うす暗い夜道。周囲に他の人はいず、一瞬「オヤジ狩り」かと不信感抱きつつも事情話すと彼、早速スマホ検索。
「あ、すぐその先ですよ!私と同じ方向ですからご一緒しましょう」
ビルなど見当たらぬ暗い人気のない方向へと導かれるという再度の不信感渦巻くなか、進む道路を左折した小道のその先、ほんと目と鼻の先に1番地が、佇んでいた場所からは見えなかった、目的のマンションが、あった。

さまようこと、なんと1時間半。
たどり着いたそのパーティは化粧品販売関係の女性の集まりだった。男性いず・・?
そういえば誘われた夜、「我輩、性転換してるゆえ女性の会でも平気ですよ、ほら、のどぼとけもないでしょ」と冗談で言った覚えが。М女史の母親も参加と聞き、年配者のむかし話も聞きたいしと本気で言った覚えも。

で、その夜、我が亡母と偶然にも似た顔立ちのその93歳のお母さんと1時間半あまり酒飲みながら歓談。会話内容からもしかしてと聞きだし共産党員と判明したお母さんと中道右派の我輩「主義主張違っても酒酌み交わせば仲良く話せるもんですね」と、お母さんの好きな酒はウイスキーというので、次回はウイスキー持参を約束す。

後悔。
1番地に案内してくださった青年の電話番号を聞いておくべきだった・・後日、お礼にと飲みに誘えたのに。

2000年のアメリカ映画「ペイ フォワード 可能の王国」は、醜いやけど跡のある新任教師(ケヴィン スペイシー)が、生徒に「世界を変える方法を考え、それを実行してみよう!」との課題をだす。それを少年(ハーレイ ジョエル オスメント)が実行しようとするのだが・・自分が受けた善意を他の誰か3人に渡すことで、善意をその先に広げつないでいこうとする心温まる物語。監督はミミ レダー。評価4.0。

不審者と勘違いしてしまった青年、ありがとう!
あなたの善意をつないでいきたいと思います・・。
(実行すべし!だけど、日ごろ人とかかわりのない一人仕事の生活下、いまは清掃中、網戸とガラス戸の間に閉じ込められた虫や掃除機で吸い込んだ蟻を助け出すばかりなり・・)。

という、我孫子がますます好きになった一夜でした。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
 
「今夜の本!」(附録;今夜の映画と名/迷/言)(9/2025)完

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