609「今夜の本!」(附録;今夜の映画と名/迷/言!)(10/2025)・

11.02.日/2025

★ガジュ丸評価基準

5「必読の傑作!」 4「一読の価値ありの秀作」 3.5「損なしかも?の佳作」3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」

NF=ノンフィクション類 ※=再読 ?=ようワカラン ×=断念作 ガジュ丸賞=月間トップ作 
注:映画評価も以上に準じます

「今夜の本!」

01.「死の接吻」アイラ・レヴィン/ハヤカワ文庫/3.5 ※
02.「夜の声を聴く」宇佐美まこと/朝日文庫/3.5
03.「夫の妹」吉村達也/集英社文庫/3.0
04.「人魚の石」田辺青蛙/徳間文庫/3.5
05.「夜よ鼠たちのために」9篇/連城三紀彦/宝島文庫/3.5
06.「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」シーグリッド・ヌーネス/早川書房/×

BOOK・OFFだったか古本市場だったかで見つけた古本「死の接吻」。1953年度のアメリカ探偵作家クラブ最優秀処女長編賞受賞の、弱冠23歳の青年の手による「恐るべき傑作」と評された、その1976年発行、1994年23刷目の文庫版。             
我輩が本書の単行本を手にしたのは1970年前後だったか。寝る間も惜しみ読み切り(かつてはそんな作品多々であった・・)、我が人生の「面白本ベスト10」にランクイン。
我輩のいまだに未完成の書庫にその単行本あるにはあるのだが、80円だったか100円だったかで今回即購入。文庫版「訳者あとがき」掲載の数多くの内外讃辞紹介文も読みたくて。かつ、アルバイト先の先輩に貸し出すためでもあった。
で、貸し出しての後日、ご本人に「面白いでしょ!」「そ〜かぁ、古くさい展開やん」「え、妊娠した女子大生を殺害した犯人がだれか・・」「○○やろ、すぐわかったわ」
で我輩、今回再読し・・先輩、読み切ったのかしらん、○○が犯人ちゃうけど?(昨今の大きめ活字に比べ当時の文字は小さすぎて・・ご年配の先輩、途中で断念?)
本書以降、有名なオカルト映画「ローズマリーの赤ちゃん」原作ふくめ、アイラ・レヴィン翻訳作すべて読破したはずのなかで、本書がベスト(脚本作「デスト・ラップ 死の罠」は秀作映画)。
本書も「赤い崖」と題しロバート・ワグナー主演で映画化されたけれども、駄作。日本で映画化された今井正監督、木村功主演の「白い崖」は観たいのに観る機会がないままの幻の作品。
※同様テーマ作のモンゴメリー・クリフト主演秀作映画「陽の当たる場所」の原作本、ドライサー「アメリカの悲劇」とともにご希望の方にさしあげます。お申し出を。

「夜の声を聴く」は、前半の「謎解き」(好みのテーマではない)で、「ああ、こういう作品かよ」と投げやり気分で読み進めていくと・・意外な展開。が、その意外さを、覚えていない・・。

覚えていずという点では「夫の妹」もそうだ。
25歳の女が50歳の上司と結婚。男には45歳の妹がいて、20も年下の兄嫁を「お姉さま」と呼び慕ってくる。そうして洋服の趣味から髪型、さらに口癖、習慣に至るまでを模倣しはじめ・・で、どうなったか、これがまた覚えていない。ま、吉村達也という作家は多作すぎる方で、それゆえか面白そうな題材なのに内容が軽いというか、印象に残らずの作が多いというようなことは、覚えている。

「人魚の石」は最近我輩が注目の女流ホラー作家。
主人公が寺の池の水を抜くと、池の底に横たわる自称「人魚」という異様に白い肌の、下半身が魚でなく両足のある青年が出てくる。そこから展開する奇談ながら、「書評家熱賛!」というほどでは?(いま気づいた。絶賛じゃなく、熱賛だった。ま、それならわかるような気も)。

「夜よ鼠たちのために」は、「覚えていない」というより、深夜の酔眼でのベッドでの読書の日々ゆえの読解力不足を見せつけられた思い。複雑な展開なのだ。毎夜毎夜再読しつつようやく読み終えたという、「このミステリーがすごい!2014年版」の「復刊希望!幻の名作ベストテン 第一位」という、コレはしらふで再読したしの珍しくも全作秀作ぞろいの作品集(酔眼読書じゃなければ評価4.0)。で、この文庫本解説で、2013年に作者が逝去していたことを知る。作者の全作品読み切っていず、いまだベスト作品不明なままゆえぜひ読みすすめたい。

断念作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」は、全米図書賞受賞作家による感動作ってんで読み始めたけれど、最初のページからその訳文のめりこめず。で、気づいた。本作が「受賞作」でなく「受賞作家による」作品ってことに。

断念作と言い切れぬのが、昨今BOOK・OFFや古本市場でともにみかけるホーガン「星を継ぐもの」。確か我が書庫に?と探すと、あった、1980年刊文庫本が。未読。
月面探査隊が深紅の宇宙服の人の死体を発見。調査の結果、その人物は5万年以上も前に死んでいたことが判明、というのが発端の物語。面白そうではないか・・だけれども科学用語およびその解説文満載で、我輩には難解すぎての今のところの断念作。

同様の問題作にキャンベル「月は地獄だ!」がある。
月面探査隊への補給船が墜落。空気も食料も欠乏していく中、残された隊員の生き延びるすべは・・完読したしと今も書棚にある、「星を継ぐもの」と同様の運命本。

10月のガジュ丸賞は、「夜よ鼠たちのために」!
                   
[今夜の映画と名/迷/言!]

「幸せはみな一色だけど、不幸せはひとつひとつ違った色をしているそうです」

昭和55年〜56年放映テレビドラマ「夢千代日記」より、吉永小百合演ずる芸者夢千代の独白。
昨年末の再放送録画を鑑賞。初放映当時に観た覚えあり。青春時代に吉永小百合と浜田光夫の青春映画「愛と死を見つめて」をはじめとして数々の吉永さん出演作を映画館で観たものだが、吉永ファンではなかった。あの鼻声が気になって(大阪阿倍野に住んでいたころ、小学校から自宅への通学路にある坂道に、戦後ゆえかバラック小屋があった。そこに住んでいた少女が吉永似で、その子は素敵な人だと子供心に思ったものだ)。当時人気の石原裕次郎もブタみたいなのになぜ人気なのかわからずじまい。
本作はスタッフ、キャストがいま思えばすばらしい。以下… 
早坂暁(脚本) 竹内満(音楽) 勅使河原平八(制作)
出演;吉永小百合 秋吉久美子 中条静夫 樹木希林 緑魔子 ケーシー高峰 あがた森魚 楠トシエ 大信田礼子 佐々木すみ江 長門勇 夏川静枝 加藤治子 林隆三

「雪は天からのやさしい便りというけれど、この地方では雪はつらい便りというのが似合います」

昭和57年の「続・夢千代日記」より、夢千代の独白。
舞台が兵庫の日本海側浜坂の冬の温泉町。続編の新たな出演者は、いしだあゆみ、檀ふみ、石坂浩二、岸部一徳。前作とともに若々しく懐かしい俳優陣ゆえ観れたけれども、白血病で余命2年という夢千代の寂しさ、とりあげたセリフがおしつけがましいように感じてしまう我輩がイヤだ。で、評価3.5。

「私は自由への長い道を歩んだ。それはとても孤独な道だった。まだ終わってはいない。私には分かる。私の国は、憎しみのためにあるのではない。生まれながらの肌の色のせいで他者を憎むものなどいない。人は憎むことを覚える。ならば愛することを学べるはずだ。なぜなら愛というものは人の心にとって、ずっと自然だから」

「愛してるんだろ」
「その通り。愛し続けてきた、昔の彼女をね」

「マンデラ 自由への長い道」(2013年 英・南アフリカ)より。
アパルトヘイト経て南アフリカ大統領となったマンデラは、「英雄は色を好む」のか、二度の結婚離婚経験者。妻らそして二人の娘のその後を知りたかったが描かれていず。かつ、マンデラ服役中、インド人は長ズボンに対し黒人は半ズボンという待遇に黒人が不満を抱く理由がわからず、かつその服役中の悲惨さも描き切れずの、物足らなさの残る作品。評価2.0。が、二番目の妻に対する上記セリフには我輩、「うんうん・・」

時計の針が 前にすすむと「時間」になります
後にすすむと「思い出」になります

寺山修司のこの詩の一節にも「うんうん・・」

「働いたあと、小ぶりのコップで小半と決めている」

「名/迷/言」じゃないけれど、タメになったゆえ取り上げた新聞投稿欄からの抜粋。
「吟醸なんかじゃなくていい。冷でよし、燗でよしの手ごろな本醸造酒に落ち着いた。若い頃は天がぐるぐる回ったこともあったが、そんな呑み方はお米の神様、お酒の神様に礼を欠く」につづいての上記の一節。63歳の女性の投稿文で、こんな方と一献交わしてみたいと思ってしまった。で、上記の「小半」の文字、初めて知ったゆえ取り上げた次第。これは「こなから」と読む。「こ」も「なから」も、ともに半分の意。半分の半分で四分の一。つまり一升の四分の一、二合五勺ということ。この方、二合半呑むんだ。いい。

「今夜の本!」(附録;今夜の映画と名/迷/言)(10/2025)完

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